「バブル景気の時代があってね」などと言っても、いつのまにか二昔も昔の出来事になってしまった。覚えているのは三〇代半ば以上の人たちだろう。だいたいあの時代には誰もバブルだなどとは思っていなかったのだ。終わってみてやっと、泡のようにはかない好景気だったと気づいて「バブル」といささか自嘲を込めて呼ぶようになったのだ。時代のまっただ中ではみんな、日本は世界一の国で、好景気はいつまでも続くはずだと信じていたのだ。
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バブル景気がいつ始まったのかは諸説あるが、専門家は景気指標などをもとに八六年十二月だという。ただ、私の実感としては、八五年くらいにはもう十分に世の中が浮かれていたように思える。好景気の原因は土地と株への投資が拡大して、地価と株価が急上昇したことだ。特に地価の上昇は激しかった。もともと日本人は「土地の値段は下がらない」という考えを持っていた。株は下がることもあるが土地の値段は下がらないという神話から、土地への投資が過熱した。土地を買って寝かしておいても必ず上がる。だから、わざわざ建物を建てたりせずに次の買い手に売るだけで利益が上がると、個人も企業も考えたのだ。実際に土地の値段は天井知らずで上かって、ついには、数字の上では東京二三区の土地の値段とアメリカ合衆国全土の土地の値段が同じ、ということになってしまった。普通のサラリーマンが自己資金とローンだけで東京二三区内に家を持つことは至難の業とまで言われるようになった。